読書日記 『現代中国を知る』

中国出身の現代美術家アイ・ウェイウェイによる『千年の歓喜と悲哀 アイ・ウェイウェイ自伝』が面白い。

アイ・ウェイウェイといえば、北京オリンピックのスタジアム「鳥の巣」の建築にも携わった中国を代表するアーティストである。
本書はそんなアイ・ウェイウェイの生い立ちから、詩人で父である艾青の半生についても書かれている。
艾青が生きたのはまさに国と芸術の間で翻弄される激動の時代。毛沢東が指導者として君臨していた時代だ。アイ・ウェイウェイの父である艾青は、ヨーロッパへ留学経験もあるまさに典型的な知識人。本書を読めば、この時代の中国の知識人に何が起きたのかがよくわかるだろう。

毛沢東と中国共産党による人類史上最大の愚挙については、『毛沢東の大飢饉』という本によくまとめられている。
中国では、この愚挙によって、500万人もの国民が死亡し、250万人が拷問・処刑死したとされる。文化大革命により、その後、中国の多くの農村は、比喩ではなく石器時代の生活に戻ってしまったのだ。

そして、より現代の中国を知るために『AI監獄ウイグル』もオススメだ。
本書は、新疆ウイグル自治区で起きたジェノサイドについて書かれた本である。
新疆ウイグル自治区には、いたるところに監視カメラが設置されている。あらゆるものが常に監視されているのだ。さらにガソリンスタンドや食料品店に行くと、入り口に立つ武装警備員の前で、IDカードをスキャンしなければならない。カードをスキャンして、画面に「信用できない」と表示されれば、その人物は入店を拒否される。さらにスマートフォンやコンピュータでのやり取りは、中国政府によりハッキングされている。

また、中国では、FacebookやTwitter等のアプリは使用禁止だ。その代わりとして、多くの中国人が利用するのが、中国大手IT企業テンセントが提供する微信(WeChat)である。

中国政府が新疆ウイグル自治区に構築したシステムは、強力なAIインテリジェンスに支えられている。
その技術を支えるのがテンセントやファーウェイのような中国大手IT企業である。

しかし、最も恐ろしいのは、人々の不安を煽る中国の戦略だ。

いかに素晴らしいAIや人工知能をもってしても、決まって欠点は存在するものだ。
新しいソフトウェアやデバイスは、多くの人が想像するほど効果的で賢くはなく、犯罪の容疑者をそう簡単には突き止められないことも多い。

しかし、ある方法によって、そうした技術的な弱点を強みに変えることができる。

それは、技術がどう機能しているか、その詳細を隠して見えにくくすることだ。そうした不確かな状況に人々を置くことで、システムの中にいる人は、自分の家族までも信用することができなくなる。

これが中国政府がとった戦略なのだ。

中国はIT技術を最も権威主義的に活用することに成功した国だ。
AI監獄ウイグル』を読めばそのことがよくわかるだろう。

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koya
読書歴10年。書評歴3年。本は読んでいるだけではダメです。 知識はアウトプットしてこそはじめて血肉となります。 私は読書歴10年ほどで、現在は毎月平均して10冊程度の本を読んでいます。 私がこの10年間で培ってきた読書のノウハウや考えは、きっと皆さんの役に立つと思っています。 目標は「他人が読まない本を手に取る読書家を増やすこと」です。
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