【書評】『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?』

本書は、50代、単身、フリーランス、貯金なしのライター・和田靜香さんと、映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』で話題の小川淳也議員(以下、小川議員)による、真剣勝負の政治問答を収めた本です。
本書は、発売1ヶ月で1万8000部を突破し、政治本としては異例のベストセラーを記録しています。

なぜ、本書はそこまで話題となったのでしょうか?
本書の面白さとは、和田さんと小川議員の「対話」に尽きます。
通常、国会議員と一市民が話せば、そこには「立場の差」が生じますが、本書の和田さんと小川議員は、まさに対等な立場で「対話」をしており、そこから生じた知見や発見が、本書を唯一無二のものにしています。

日本が抱える最大の問題「人口問題」について

さて、本書の内容で気になったのは、日本が抱える最大の問題、「人口問題」です。
ご存じの方も多いと思いますが、日本の人口は、2004年12月をピークにそこから約100年をかけて急激に減少していきます。
ざっと現在1億人いる人口が、その約半数近くになるということです。
こうなってしまえば、まず現状の社会保障制度が破綻してしまいます。

そして特に興味深かったのが、これまでの日本の税金に対する考え方です。
日本は他の先進国に比べて、消費税率が低く設定されていて、例えば、税率が高いデンマークでは消費税率がなんと25%です。
これにはさすがのデンマーク人も税金の高さを嘆いていますが、自分たちのために本当に使われているという政府への信頼があるからこそ受け入れています。

日本の消費税率が低い本当の理由

では、日本はなぜこんなにも税率が低いのでしょうか?

日本の長く続いてきた自民党政治の根っこには、社会保障等による「救済」ではなく、公共事業に代表される「働く機会の提供」を重視する思想があった。つまり、国が直接に私達を助ける仕組みはほどほどにして、私たちは働くことで、自分でなんとか生活するよう、仕向けられてきたんだ。

つまり、他国では、高い税率を設定し国民から吸い上げた資金を元手に、政府が無償、ないしは安価で提供するような財・サービスを、日本では減税して国民に還元し、その分、我々は自由に選択できるという権利を享受していたのです。
だからこそ、税金という形で国に捧げるという考えに私たちは馴染みが少ないのです。
しかしこれも所詮は昔ながらの考え方です。
日本の高齢者向けの社会保障は世界でもNo.1ですが、一方、私のような現役世代向けの社会保障はというと、他の先進国の同世代に比べ半分程度の保障しかされていません。
この税制の考えも過去の遺産です。
そろそろこれまでの日本の税金に対する考え方を見直すべき時期であると言えます。

民主主義は時間がかかる

コロナ禍の日本政府の対応は、ずさんなものでした。
約260億円をかけて全国民に配布したマスクは、配布開始から完了まで約2ヶ月もかかり、緊急事態宣言発出後の飲食店への対応も、自粛営業をお願いするばかりで、休業補償も出さず、判断は各店舗任せにするという有様でした。
さらに、菅政権に交代してからは、退路を断って是が非でもやり遂げるという迫力は感じられず、その都度ゴールポストを動かして後追いするだけという政府の姿勢に多くの国民が失望しました。
私たちは、増々すぐに決断できる政府を求めています。
しかし、そうであれば、中国のようにトップダウンで物事を決められる、共産主義社会が一番ということになるでしょう。
民主主義は時間がかかるのです。
私たちにできることは、政治に無関心のままでいることではなくて、まずは選挙で投票に行くことでしょう。

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koya
読書歴10年。書評歴3年。本は読んでいるだけではダメです。 知識はアウトプットしてこそはじめて血肉となります。 私は読書歴10年ほどで、現在は毎月平均して10冊程度の本を読んでいます。 私がこの10年間で培ってきた読書のノウハウや考えは、きっと皆さんの役に立つと思っています。 目標は「他人が読まない本を手に取る読書家を増やすこと」です。
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