『NO HARD WORK!』会社の無料ランチは害悪?働き方改革に一石を投じる問題作。

本書は、ベストセラーとなったビジネス書『小さなチーム、大きな仕事』の著者であるIT起業家コンビによる、昨今の働き方改革に一石を投じる問題作だ。

著者の一人は、何とあのRuby on Railsを開発した世界的な技術者である(Rubyで開発されたサービスといえばTwitterなどが有名だ)。
IT業界という熾烈な競争環境に身を置くはずの二人が掲げているのが、意外にも「穏やかな会社」を作ろうというものだ。

本書の主張はどれもとてもシンプルである。
「頑張りすぎるな」「世界を変えるな」「僕らは家族じゃない」など、拍子抜けするようなタイトルが多い。

本書の構成は、こうしたシンプルな主張に続いて、彼らが自分たちの会社で実践している多くの事例が紹介されている。
そして、その内容の多くが、日本人の我々には到底思い付かないようなクレイジーなものばかりなのである。

例えば、会社の福利厚生として、社員向けの無料コーヒーやランチを提供している会社も多いだろう。
こうした会社は、世間的には福利厚生が充実している会社なんて思われている。

しかし、著者らは、こうした気前のいいサービスは、社員を体よく会社に縛りつけ、最大限の労働力を搾り取るための策略だと主張する。
無料のランチでいえば、社内でランチを食べることは、通りで外食する場合と違い、社員を社内に留めて休憩時間を早めに切り上げさせることにつながるらしい。

無茶苦茶な発想だと思うかもしれないが、著者らがこうした発想をするのは、本来の福利厚生とは、社員が仕事を離れてより健康でおもしろい生活を送るためのお助けツールであるべきだという、まっとうな考えがあるからである。
さあ皆さんの会社の福利厚生はどうなっているだろうか?

他にも時間と集中力についての考え方も興味深かった。

本書では、会社が一番に守るべきものは、社員の時間と集中力であると言っている。
多くの社員は、なぜ仕事に集中できないのか、そして、なぜその日の仕事をその日中に終わらせることができないのだろうか?
ビジネスマンであれば常日頃から考えていそうな課題であるが、この点についても著者らの考えは独創的だ。

著者らは、その原因として、多くの社員が会議などで1日の時間が細かく分割されてしまっているからだと述べている。

会議の後で自分の仕事に戻るには、頭の切り替えに案外時間がかかるものだ。
実はこうした細切れの時間に自分の仕事に戻るというやり方が一番非効率なのである。

社員が集中するためには、細切れに分割された時間ではなくて一つのまとまった時間が必要だ。

著者らの会社は、そのために定例会議の必要性や会議の予約方法・ルールに独自の考えを取り入れている。
どれもぶっ飛んだアイデアであるが、とても参考になるので、この続きはぜひ本書を確認していただきたい。

著者らの会社は、100人程度の会社で世界の30カ国にいる社員がフルリモートで働いている。
本書の事例を読んで、そんなことができるのは、普段から異質な環境で働いているからだと思うかもしれない。

しかし、全くそのようなことはないと断言できる。

本書の内容はどれも明日からの行動を変えてくれるようなものばかりである。
特にリモートが普及している会社で働くビジネスマンには大いに参考になるだろう。

本書は、仕事をする上でとても重要な問題に対して突破口を与えてくれる、そんな一冊だ。

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koya
読書歴10年。書評歴3年。本は読んでいるだけではダメです。 知識はアウトプットしてこそはじめて血肉となります。 私は読書歴10年ほどで、現在は毎月平均して10冊程度の本を読んでいます。 私がこの10年間で培ってきた読書のノウハウや考えは、きっと皆さんの役に立つと思っています。 目標は「他人が読まない本を手に取る読書家を増やすこと」です。
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