18世紀フランスの美食家ブリヤ・サヴァランは、「あなたが普段から食べているものを教えて欲しい。あなたがどんな人であるか、当ててみせよう」と言った。どのような食習慣をしているかを知ればその人のことがよくわかると言うのは非常に的を得た言葉であろう。
今日のテーマは、我々の食習慣についてだ。我々の食習慣において欠かせないのが肉食であることは言うまでもない。しかし、この肉食がどれほど地球環境や動物たちに悪影響を与えているか考えたことはあるだろうか?
オーストラリアの哲学者ピーター・シンガーの『なぜヴィーガンか?』という本では、人々がヴィーガンになるべき理由を三つ挙げている。それらは、動物への配慮、気候変動の問題、自分の健康への配慮である。そもそもヴィーガンとは、肉や卵、牛乳、チーズやバター、魚介類などの動物由来の食べ物を一切食べない食生活をする人のことだ。ヴィーガンに対してあなたはどのような印象を持っているだろう。変わった人たち、それとも単なる動物好き?いずれでもないことは本書を読めばきっと理解ができるはずだ。
さて、先ほど挙げた3つの理由の中で気候変動の問題があったが、肉食がどれほど地球環境に悪影響を与えているかご存知だろうか?
国連の調査によれば、畜産業から生じる温室効果ガスの排出量は、運輸部門全体のそれに匹敵するという。さらに、畜産業は抗生物質とワクチンの消費市場としても、空気、土地、海の汚染原因としてもトップクラスにランクしている。環境問題を嘆く場合、避難の矛先は石油や石炭などの化石燃料に向かいがちだが、現代の食肉産業はそれに劣らぬ汚染源なのだ。
これだけでも十分、我々が肉食を辞めるべき理由になるだろう。
さらに、人間があらゆる食用に育てられる動物たちに与えている影響についてはもっと深刻な状況である。『なぜヴィーガンか?』では、「これが鶏の倫理的な扱いだろうか?」という章で、食用に育てられる鶏たちの劣悪な飼育環境について書いているが、ここを読むだけでも事態の深刻さが十分理解できるだろう。実はマクドナルドは鶏肉の生産に用いられるブロイラーに対するその残酷な扱いによって訴訟を受けている過去がある(マック名誉毀損と呼ばれる)。
ここまで我々が肉食を辞めるべき理由をいくつか話してきたが、そうは言ってもきっぱり肉食を辞めることが多くの人にとって難しいことに変わりないだろう。ここで大事なのはもっと柔軟な考えを持つことである。
例えば、ベジタリアンとは、肉は食べないが卵や牛乳などの乳製品は食べる人なども含む広い呼び方を指すが、中にはペスカタリアンないしペスコベジタリアンといって、魚介類も食べるベジタリアンもいる。『なぜヴィーガンか?』の著者のピーター・シンガーも自分のことを「フレキシブルなヴィーガン」と呼んでいるが、それは彼がときどき牡蠣やホタテ貝などの二枚貝を食べたり、放し飼いの鶏の卵を食べたりすることがあるからだ。その理由は、二枚貝には神経系がなく痛みを感じないからだという。
自分たちが普段何気なくしている購買や食事が、世の中にどのような影響を与えているかよく考えてみるべきだ。
今日紹介した『なぜヴィーガンか?』は200ページもない本なので、新書のような感覚で読むことができる。難しいことは一切書かれていないのでぜひ手に取ってみてほしい。
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