あなたが麻薬について知っていることは、すべて間違っている―。
刺激的なキャッチコピーで始まる本書は、薬物問題について何かを論じようとする際には必ず読んでおかなければならない1冊です。
薬物についてみなさんはどんなイメージがあるでしょうか?
おそらく以下のような内容ではないだろうか。
薬物を使うやつや依存者は、犯罪者として扱うこと。抑えこむこと。恥ずべきことだとわからせること。強引だとしてもやめさせること。
この認識は、ほぼ世界中のすべての国で一般的な考え方となっています。
しかし、本書を読めば「ダメ!ゼッタイ!」としか言われてこなかった、これまでの対処方法がいかに害でしかなかったかがわかるはずです。
本書では、世界各国の薬物問題への取り組みについて、経緯から現状まで事細かに描かれており、まさにジャーナリズムの凄さを感じられる1冊です。
9割の人間は依存症にならない
本書は、なにも薬物使用を養護しているわけではありません。
たしかに薬物は依存者を生み出します。
そして、重度の依存者は、やがて廃人となって自分ではどうすることもできなくなるでしょう。
しかし、本書によれば、そのような重度の症状となる人間は、薬物使用者全体の割合でいえば、たった1割程度だといいます。
つまり、統計的に見れば9割の人間は依存症にならないのです。
では、その1割に入るような人たちは、いったいどんな人達なのでしょうか?
本書によれば、その多くは子供時代に大きなトラウマを経験した人たちのようです。
薬物を注射するようになる原因の約三分の二は、子供時代に経験した、身体的な虐待や性的虐待、両親の死といったトラウマで、この関連性は、疫学や公衆衛生ではまず見られないほど桁違いだといいます。
多くの人が「私なら絶対に薬物に手を出さない」と思っていますが、そのようなことを口にする人に著者はこう問いかけます。
あなたが薬物に手を出さずにすんでいるのは、そんな必要がないからだ。耐え難いほどの痛みにどうやって向き合ったらいいのかを知る必要がないからだ。自動車事故で片足を切断した人を見て、「私なら絶対に足を切断しない」なんてことが言えるのか?言えるわけがない。自動車事故にあってないんだから。
終わりに
本書にはもう1つ興味深いことが描かれています。
それは、「統計上、警察が関わるほど殺人犯罪が増える」ということです。
これは、かつての禁酒法がいい例です。
いまから100年前、アメリカで禁酒法という法律が作られた時は、密造酒がはびこり闇取引が増えたため、アメリカは一層悪い事態に陥りました。
著者は、薬物でも同じことが起こっているといいます。
本書を読めば、薬物の「まわり」でどれだけの人が殺されたり不幸になっているかがわかるでしょう。
本書は、世の中の真実を知りたい人にオススメです。
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