多くのビジネスマンは、どんな状況でもすばやく柔軟に対応し、困難を乗り切れるような人材になりたいと思っている。
目標に向かって真面目に取り組み、突き進むことにしか脳がない人間はもはや時代遅れそのものだ。
もちろん、努力を継続することも大切である。
でも、「努力が身を結ばない」、「ネガティブな感情を引きずってしまう」、「周囲の状況や人間関係の変化についていけない」といった場合もあるだろう。
本書は、そんなあなたの大きな味方になる一冊である。
著者のエレーヌ・フォックスは、認知心理学者であり神経科学者でもある。
そんな彼女が提案するのは、困難に直面したら考え方と行動を切り変えられるような人間になることである。つまり、状況に応じて最適な対応をして、自ら変化を起こすためのスキルを備えることだと言う。
真面目に努力しても周囲と上手く関係が構築できない、仕事で評価されないと感じている読者は、すぐに本書を手に取るべきだろう。
本書は、そんな「切り替える力」を支える4つの柱として、①すばやく柔軟に対応する、②自分を知る、③感情への気づき、④状況をつかむを順番に解説している。
①すばやく柔軟に対応するは、柔軟ですばやい思考の切り替えと行動によって、人生は変わるというものだ。
すばやく柔軟に対応するためにはまず、シンプルな決断を下す必要がある。まずは「こだわるか」か、それとも「切り替える」かを判断するのだ。重要なのは判断するタイミングで、本書では、玩具メーカーのレゴ・グループの事例を挙げて解説している。
また思考を切り替えるという視点では、マルチタスクをこなす工夫としてちょっとしたコツが紹介されている。個人的にはあらかじめ隙間時間(休憩時間)をスケジュールに組み込むというのが、当たり前のようで参考になった。
②自分を知るは、思考・感情・行動を認識して、それらが他者にどんな影響を及ぼすかを自覚することを指す。自己認識力が高い人は、どうすればもっとうまくやれるか、自分の行動のどんな点を修正すればいいかを検討できるため、成長も早いという話だ。ただ、多くの人はそんなことは百も承知であるにもかかわらず、それができていない。
そんな時は、自分の性格を知ることは、いわば確率や傾向を理解するようなもので、単純に0か100かで区別できるものではないと思うといいだろう。自分の性格の「スタイル」さえ把握できていれば、状況によって自分がどんな行動をとりやすいかがわかり、対策も立てやすい。
③感情への気づき、④状況をつかむの解説はここでは省略するが、どの章も簡単なエクササイズと科学的なエビデンスの裏付けにより、納得感があって読み進めることができる。
新型コロナウイルスやウクライナ紛争など、世の中の予測不可能性が高まる中で、個人としてできる最大限のことが書かれた一冊である。
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