本書は、Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作家の石川宗生さんが書いた旅行記です。
本書の旅先はアジア圏を軸に、中国、パキスタン、キルギス、ウズベキスタン、アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニア、トルコ、ブルガリア、ギリシャ、マケドニア、セルビアまで、ざっと12カ国を半年間で旅した際の物語となります。
旅先で出会った、バックパッカー仲間や現地に住む人々との交流を赤裸々に語っていて、まさに臨場感たっぷり、ドキドキすること間違いなしの本です。
旅人向けの世界一の情報宝庫
まず、本書の旅路のスタート地点が、中国新疆ウイグル自治区のカシュガルという点で、著者が常人とはかけ離れた旅人であることがわかります。
中央アジアを周遊し、コーカサス方面を目指すルートにある安宿でのバックパッカー仲間との出会い、怪我をした足をシャーマンに見てもらったり、気温五〇度で息も絶え絶えだったり、大酒飲みのオーナーのゲストハウスで酒盛りしたり・・・。
まさに本書は、Google検索では出てこない、旅人向けの世界一の情報宝庫とも言えます。
旅先での必需品とは?
私が本書で面白かったのが、ウズベキスタン国内の安宿で、同じバックパッカー同士が集まり夜な夜な会話している場面です。
「バックパッカーQ&Aコーナー」と題して、就寝前に大盛り上がりをしています。
たとえば、旅先での必需品とは?という話で、以下のような会話が繰り広げられます。
うーん。パッと思いつかないですけど、折りたためる洗濯物ハンガーですかね。
延長コードかな。ドミトリーで枕元にコンセントがないときとか役立つんだ。
シャワーついでに、折りたたみ式の釣りバケツで洗濯しているよ。
本書によれば、釣りバケツは結構持ち歩いているバックパッカーは多いのだとか。
釣りバケツって一体何でしょう。。。
現地人からのたらい回しは日常茶飯事?!
そして、やはり辺境の地ならではのトラブルも満載です。
例えば、最初のスタート地点のカシュガルからパキスタンに向かう際に、タシュクルガンという中継地点に移動しようとしていると、カシュガルの宿の亭主から、タシュクルガンでは、中国政府からの許可証かツアー・ガイドがいないと検問所を通れないという情報を聞かされます。
そして以下のような助言も。
さっき話したシンガポール人がいまここの姉妹店のホステルに泊まってるから、詳しいことは彼に訊いてみればいいよ。
そう言われてホステルに行ってみれば、
詳しいことは、レセプションにいるスキンヘッドの従業員に訊いてみればいいよ。彼ならいろんなことを知っているから。
とさらなるたらい回しをくらって、スキンヘッドの従業員に訊いてみれば、追加の新情報を言い渡されて、終いには別にそんなのなくても検問所は通れるという話に。
これにはさすがの著者も苦笑でした(笑)
四分の一世界旅行記とは
本書は、コロナ禍で旅行に飢えている人にオススメです。
旅に出ればこんな人もいて、こんな出会いがあるのだということがわかるでしょう。
そして、本書は、終始かる―い調子で書かれていますので、くすっと笑いあり、うるっと涙ありの、そんな旅行記になっています。
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